県スポーツ協会副会長 片平 俊夫(78) 4
駅伝はスター発掘の場
本県は有力な長距離ランナーを数多く輩出している。駅伝で選手を育成する土壌が長年の歴史の中で築き上げられてきたからだ。
福島民友新聞社が1946年(昭和21年)に白河-福島間県縦断駅伝を主催し、戦前からこの区間で行われていた駅伝を復活させた。民友新聞社が戦中の言論統制に伴う休刊を経て復刊した年でもある。「民友駅伝」とも呼ばれ、73年の第28回大会まで続いた。主に自衛隊や高校などのクラブチームが出場し、距離は1区間当たり16キロ程度と長かった。本県の長距離ランナー育成に相当な貢献があった。
ふくしま国体を6年後に控えた選手強化のため、民友駅伝をヒントにして、平成が幕を開けた89年に始まったのが市町村対抗県縦断駅伝競走大会(ふくしま駅伝)だ。白河市から福島市まで国道4号を中心に北上するコースは、民友駅伝がベースになっている。福島陸協の強化部長を務めていた私は、最初に福島民友新聞社に主催を打診した。道路交通事情を理由にやんわりと断られてしまったが、県警のご理解、ご支援をいただき、大会開催に至り、昨年で第33回を迎えている。
ふくしま駅伝は市町村対抗の大会だ。単なる駅伝ではなく、地域おこしにつながるようにしたかった。「おらが町」「おらが村」という郷土意識が高まり、盛り上がりを見せている。人口規模による戦力差があり、市町村ごとに3部門を設けて公平性も確保した。
そして、最大の特徴は幅広い年齢層が出場することにある。県内全域からタレント性のある若い選手を発掘できる場になった。
2008年北京夏季五輪男子マラソン代表で中国電力陸上部ヘッドコーチを務めている佐藤敦之君(会津高卒)の中学生時代には驚かされた。中学生が一般に交じって走れる区間で、彼は「本県のレジェンド」として一目置かれていたベテラン選手をあっという間に追い抜いた。オーバーペースと思ってレースを見つめていたが、そのままたすきをつないだ。私はテレビ中継の解説で「この中から間違いなく五輪選手がでてきますね」と語ったことを覚えている。
(聞き手 鈴木健人)
白河―福島間縦断駅伝競走「民友駅伝」で白河駅前をスタートする選手=1972年
かたひら・としお
伊達郡保原町出身。保原高、順天堂大学体育学部卒。1967(昭和42)年教員採用。長年にわたり陸上界の発展に尽力。95年の「ふくしま国体」では本県の天皇杯獲得(男女総合優勝)に裏方として貢献した。2015年みんゆう県民大賞受賞。
(福島民友2022年8月18日付)